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#15 Final Project (Part 4)

2018/07/24 ~ 2018/08/01

​先週のリサーチ:

     オスカーシュレンマーは機械化社会において、機械化の生産的な面ではなく、あらゆるものを機械化した後に残る「機械化できないものの認識」に注目していた。そして、芸術の中に人間が生きる意味を見出そうとしていた。

 

     時代の徴候は機械化であったが舞台芸術に機械を取り入れることは決してなかった。彼の作品の理論にあるものは「純粋な抽象化の拒絶」で人間を物理的な側面から追求したデザインが特徴だったが、それはあくまでも人間性を残した抽象化であり、彼の「芸術の本質は人間にある」という思想と大いに関係がある。また、「どんなに自動的、機械的に動かされる人形や舞台セットを作りたいと思っても、決して『機械的なバレエ』を創ることはなかった」と言及していた。

 

衣装について

     衣装の形体そのものは人間の身体機能の抽出と、そこから導き出される幾何学的形体によって構成されている。抽出された身体部位やダンサーポーズなどのイメージから舞台衣装の構成が練られた。幾何学的形態を利用した衣装が人間の抽象化ともいえる。

 

   シュレンマーは、ディオニュソス的(陶酔的、創造的、激情的)、アポロ的(主知的傾向を持ち、静的で秩序や調和ある統一を  目指す)、の二つの要素を舞台上で平衡させることにより、人間の存在を表現しようとしていた。つまり、身体機能を抽出することで生まれる形態を利用することによって、有機的な法則に基づく人体を、空間による数学的な法則に適応した。

シュレンマー:「トリアディック・バレエに利用した世界は、平面幾何学と立体幾何学の基礎原理によるものであり、それは我々の時代にふさわしく、魅力的な表現素材として置き換えられる」

 

     究極的な表現者の実現のためにはさらなるスキルの発展が必要だったが、表現者を舞踏人化するために機械を導入することはなかった。それは、求める真の表現者がどれほど超人的な存在であっても、芸術の本質は人間にあり、また、求めた舞台芸術とは人間の存在を表現する場だったからである。

 

     舞台作品においてシュレンマーが表現しようとしていたのは、普遍的な人間の姿であり、それは個人を超え、宇宙的な秩序に基づく存在としての人間であった。舞踏人という究極的な表現者は、舞台空間の法則、身体の有機的法則、そして表現者自身や観衆の心的作用にも従う ことで、自身の内側から表現のすべてを生み出すのである。このような人間を超えた究極の表現者である舞踏人とは、ニーチェによる超人的な存在といえる。

 

     自己を超えた舞踏人になるには、自己を乗り越える必要があり、自己を乗り越えるためには自己を知ることが必要だった。その方法として、幾何学的な衣装を利用した。これは、シュレンマーが演劇やパフォーマンスにおけるもの以上に自己を強く認識させるのが可能なのは衣装であると考えていたからである。

 

 

 

なぜオスカーシュレンマーが抽象化したのか

「我々の時代の徴候は抽象化である。それは大きな輪郭の中で新しい全体を形作るために、普遍化や統一化をもたらす」と言及。つまり、幾何学形態を利用することは、対象を抽象化するということである。

 

なぜ◯△□なのか

     オスカーシュレンマーはクレーやピカソ等の他に、世阿弥にも影響されていたと言われている。世阿弥といえば禅。禅のことは詳しくはわかりませんが、宇宙全体または森羅万象に共通する仏の心であり、自由自在な心、無になることという解釈がある。シュレンマーが目指していた「宇宙的な人間」の表現になんとなく似ていることから、禅で有名な◯△□の形を使ったのではないかと考えられる。

 

シュレンマーが思う人間を構成するアスペクト:

     肉や血、精神や感情、関節。これをヒントに製作しようと思う。

 

 

以下みっぽ案について:

 

     シュレンマーは日記で「人体全てを極めて変現する多重なる複合化合物のようなものにしたい」と書いていたが、トリアディック・バレエ含め、人体全てを扱っていない。外から見たときの人体しか扱っていない。これは当時の技術では人間の中身が見えなかったからであると考えられる。今日、シュレンマーが存在していたら内臓も含めて人体を抽象化するのではないかと考え、今回は人間の中身を含めて人体を抽象化する方向で作品を作る。

 

抽象化:

     抽象化とは対象から注目すべき要素を重点的に抜き出して他は無視する方法であるので、まずはそもそも扱う内臓を少なくする。シュレンマーは人形や彫刻に動きを与え、衣装をダンサーに着せて踊らせていたので、動かないものをわざわざ動くようにしていた。このため、「人間」と言っても、主に「生きている人間」を扱っていたのがわかる。

     生きている人間を、中身(内臓を含めて)抽象化して表現するために、生命維持に必要最低限の臓器を残す方向に。

     生命維持に必要不可欠の臓器が、心臓、肺、肝臓、腎臓、脊髄の5つである。医学にはあまり詳しくないのですが、心臓は必要、肺は1つでいいが呼吸に必要、肝臓は1/3は必要、腎臓も1つでいいが必要、脊髄は神経等で必要、とのこと。

 

     5つ、に関しては、シュレンマーは3という数字を基本にして大事にしていたのは事実だが、べつにガチガチに守っていたわけではないという印象を受けたからである。そして必要最低限の臓器を3つに絞れなかったのもある。

 

形:

     シュレンマーは日記で、「自分はリジットで「幾何学的なもの」を使いながら、柔軟で「多重的多層的な合成物」を産みたい。そして人体全てを極めて変幻する多重なる複合化合物のようなものにしたい」と書いていた。

いうまでもないが、幾何学的なデザインは絶対に取り入れるべきだと思った。さらに、物事を抽象化する際に、キュビズムであるように全てを四角形にする方法や、現代であれば3Dモデルのメッシュ数を減らす方法、またはそもそも形をなくすという方法もある。しかし、◯△□を使用するのはシュレンマーの「芸術は人間の本質にある」を表現するために非常に大切なツールだと思ったので、◯△□を基本形として取り入れることにした。

 

◯△□について:

     シュレンマーは禅の思想が自分の思想と似ていたため禅の◯△□を用いていたと考えられるが、身体の部位やポーズのイメージから◯△□を当てはめて言ったように見える。つまり、◯△□の一つ一つの意味まで知っていてデザインしていたとは言いがたい。

現代は100年前に比べて多言語話者同士でのコミュニケーションが容易になった。そのため、シュレンマーがもしこの時代に生きていたら、◯△□の意味も用いて何かデザインするであろう。ということで、◯△□の意味にも触れたデザインを目指す。

◯:【円相】宇宙に存在する全てのもの、宇宙そのもの、絶対的な真理。いつどんな時にも変わることのない知識、認識。

△:【禅の坐相】足を組んで坐禅する時仏と一体となった姿。

□:【とらわれた心】社会の常識という四角の中に囲まれて生きている

色(形あるもの)は空にことならず、形あるものの世界は三角と四角から成り立つ。四角は半分にすると三角になり、三角のままおり続けられる。

 

     臓器に当てはめると、

  • 心臓:◯ (心臓は絶対に必要で、それは変わらないから)

  • 肺:□/2=△ (肺二つあるので、「四角は半分にすると三角になり、三角のままおり続けられる」という言葉を参考に、三角形ベースに)

  • 肝臓:△ (肝臓の形をそのまま再現)

  • 腎臓:□/2=△ (肺と同様)

  • 脊髄:□ (棒。入れるかどうかまだ未定)

 

全体の形:◯△□全てを入れた立体。

 

 

色彩:

     シュレンマーは表現者自身の内側から表現の全てを生み出すことが超人的な人間になると信じていた。その上、は人間性や感情を大切にしていた。そのため、感情も要素として取り入れようと思っていたと考えられる。

     近年の研究で色彩と感情、感情と体は繋がっていることがわかっている。つまり、「病は気から」ということが実証されている。

     これを利用して、色、感情、体の部位を繋げる。

  • 心臓:喜び、黄

  • 肺:悲しみ、青

  • 肝臓:怒り、赤

  • 腎臓:恐怖、黒

  • 脊髄:未定

 

空間:

     臓器はちゃんと定位置があるので、それにちなんですべてのパーツをある程度固定させたい。また、複雑な立体の透明なケースの中に入れたいので、全て浮いて見えるようにした方がよく、この時、目立つ糸や配線は厳禁である。

​     心臓と肺には動きをつけたいと言っていたが、心臓を中心に循環される血液を再現したいと思った。また、肺も呼吸しているかのようにしたいので、それも検討しておく。

     動きをつける理由:死んだ人と生きている人の大きな違いは、動きがあるか否かであると考えた。生きている人は何かしら動いていて、それは寝たきりで手足が動かなくなったとしても、心臓の鼓動だったり、呼吸だったり、行きていれば必ず動いている。シュレンマーは生きている人間を表現するので、動きを持つことは重要なのではないかと考えた。

材料:

一番外側の立体は、中身を見せないといけないので、アクリルや塩ビ板等の透明な素材を使おうと思った。材料はなるべく統一した方がいいかなと思ったので​、臓器たちはアクリル板で統一。

​動きはDIYドリンクバーを参考にして、水中モーターやチューブなども必要と思った。音は正直余裕があればの話なので、とりあえずは水中モーター、チューブ、電池。

制作①

​まずはRhinoでモデリングをした。

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とりあえず出力。あまり大きなものを作る予定ではなかった。

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あまり大きなものを作るつもりはなかったものの、電池やモーターなどはどうしようという問題が発生した。この時、内臓の中に入れようと思ったので、サイズを大きくしようと思った。

臓器の働きを踏まえた上で、電池は肝臓、モーターは腎臓、というように考えていた。また、心臓には水を送ろうと思っていた。

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しかし、これだと動きを自分で制御できない上に、内臓は透明のアクリルで作る予定だったため、その中にぶち込んだら見えてしまい、シュレンマーの「機械は決して使わない」思想に反するのでやめた。どこに隠すかの問題はここでは一旦保留だが、Arduinoを使うことを決心した(完全にトラウマ)。

制作

もともとあまり大きくないものを作る予定でいたので、立体はヒートプレスで塩ビ板を加工するつもりだったので、塩ビ板0.3mmとヒートプレスに必要な道具(パンチメタルなど)を購入。また、Arduinoの基板やブレッドボードなども入りそうなサイズがいいと思い、250mm*200mmの発砲スチロールの円柱を購入。

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頭悪いので、このようにカッターで地道に削っていった。

こんなに大きいなら、ヒートプレスじゃなくて良いのでは…と気づいた(遅い)。

​以下のように、塩ビ板に目印をつけて直接貼っていくことにした。

​材料が足りなかったのでクリアファイルで代用。

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​塩ビ板やアクリルだけだとどうしても不安定なので、枠を作ることにした。

制作
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レーザーカッターで実寸で切り、以下のように組み立てた。

家で作業していたので、次の日学校で枠を出力する前になんか作ろうと思い、百均で買ったアルミワイヤーを3mmと0.1mmのものを購入した。

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3Dプリンタ使わずに作れるかなと期待したが、やはり綺麗にはできなかったので、大人しく3Dプリンタを使うことに。

そして枠は以下の通り。プロトタイプ①でモデリングした時のoutlineを残しててよかった。

​最初は以下の写真のような枠ではなく、pipeで直径5mmの枠であった。

そのまま出力しようとが、言うまでもなく失敗した。​なので、枠を分解し、丸ではなく四角にし、3mmにした。

​最初は全然うまくいかなかったが、extrude multiplier を1.3、温度を200度、スピードを3000mm/minにしたら割とうまくいくようになった。

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制作

心臓の動きはArduinoで制御するというのは決まっていたので、肺の動きを考えた。

とりあえず中学の理科の授業でやるような内容を家でもやってみた。

​コンドームで肺を作ってみた。

コンドームは生命の誕生を妨げる役割があるのに、そのコンドームを使って生命を表現するという矛盾に惹かれた。一瞬全てコンドームで作ろうか考えたが、考え直す時間がなかったのでやめた。このアイデアはいつか他の時に実現したいと思う。

​また、この動きを取り入れられたらいいなと思った。収穫。

制作

Arduino初心者セット、トランジスタ、DCモーター、チューブ、9V電池、9V電池のアダプターを購入。

最初怖かったので、もともと持っていたArduinoの基板を用いた。前回はパソコンに繋げたらショートして壊れて使えなくなったので、今回は外部電源にさした。またショートした。でももう一つあるので大丈夫。

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意外と早く終わった。配線は以下の通り。このサイトを参照した: http://2m3g1.com/2693.html

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制作⑥

保留していた基板をどうするか問題。作品の台を作り、その中に入れて隠すことにした。

ということで、300*300の台を作ることに。

厚みを間違えて寸法を間違えたり、垂直に接着できなかったりなど、予想以上に時間がかかった​。

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制作⑦
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枠をピンクのPLAで出してしまったので、ラッカー塗料で塗った。

​色はつくが白で出した方がいい(当たり前)

​結局白でもう一回出した

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レーザーカッターでアクリルを切って溶接剤でくっつけた。

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​紐で全てを吊るそうと思ったが、時間が経つにつれほつれていく未来が見えたので、やめた。

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​レーザーで切った放物線型のアクリルを貼った。

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​臓器を繋げた。

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心臓を作った。

アクリルの球を黄色い油性ペンで塗り、色をつけた。

​のちに半田ごてで穴を開けた。ここがチューブの通り道になる。

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完成品
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反省:

脈拍センサ使いたかった​​

材料を余分に買うことが本当に大事

余裕を持って行動する、計画性の大切さ

​失敗の可能性

​遠回りしすぎ

​細かいところへの気配り

収穫:

アクリルや塩ビを使い、新たなマテリアルに触れることができた

Arduino​リベンジ

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